グレイシー・エイブラムス、即完売を記録した初来日公演のオフィシャル・ライヴ・レポートが到着!

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グレイシー・エイブラムス、即完売を記録した初来日公演のオフィシャル・ライヴ・レポートが到着!
Photo Credit Abby Waisler

Gracie Abrams(グレイシー・エイブラムス)が最新アルバム『The Secret of Us』を引っさげて初の来日公演を2025年4月8日Zepp Hanedaにて実施。この公演について、音楽ライターの新谷洋子氏によるこのコンサートのオフィシャル・レポートが到着した。

■『Gracie Abrams: The Secret of Us Tour』オフィシャル・ライヴ・レポート
ずばり、ポスト・テイラー・スウィフトの最有力候補と目されているLA出身のシンガー・ソングライター、グレイシー・エイブラムスが、4月8日に東京・羽田のZepp Haneda でソールドアウトの初来日公演を敢行した。計17曲のセットは、日本で正式にリリースされたばかりのセカンド・アルバム『The Secret of Us』(海外では2024年6月発売)の収録曲を中心に構成。ぬくもりとハピネスに溢れるこの日のインティメートなショウは、終始声を張り上げて彼女と一緒に歌っていたオーディエンスの合唱を伴い、グレイシーと日本のファンの絆のセレブレーションになったとも言えるのだろう。

本公演は昨年9月にアメリカで始まり、今年に入ってヨーロッパ、続いてアジアに舞台を移した、『The Secret of Us Tour』の一環で実現したもの。ご存知の通り、道中でシングル『That’s So True』がキャリア最大のヒット(全米HOT100最高6位)と化して飛躍を遂げたグレイシーの姿を目撃するべく、Zepp Hanedaには約3,000人が詰めかけた。大多数は若い女性で、白いリボンで髪を飾っている人が目立つ。というのも、まだ髪が長かった数年前、グレイシーがいつも白いリボンを付けてステージに立っていたことからファンの間では一種のシンボルとして定着し、世界中どこでも彼女のライヴの会場ではたくさんのリボンが見かけられるようになったのだとか。実際、トラディショナルで、ガーリーで、すごく彼女らしい。

グレイシーがまとう、お伽話のプリンセスみたいなドレスの色も白で、胸に大きなリボンがあしらわれていた。トリオ編成のバンドが1曲目「Risk」のイントロを奏でる中、ギターをかき鳴らしながら現れた彼女は悲鳴に近い歓声に迎え入れられたが、本人もオーディエンスと同じくらいに初の日本公演に興奮している様子で、最初の3曲を歌い終えると次のように語りかけた。「『The Secret of Us Tour』へようこそ。こうして日本で初めてパフォーマンスを見せられるなんて信じられない! あなたたちがいるからこそ私はこうして活動できていて、各地を旅して歌を分かち合うことで、ほかにも私と同じような体験をしている人が大勢いることが分かるし、みんなとつながっていて自分は独りじゃないと実感できる。だからみんなも、ここから帰る時には自分の想いを聞いてもらえたと感じてくれたらうれしい」。そして『The Secret of Us』の収録曲を親友のオードリー・ホバートと綴ったことにも触れ、「このツアーのスピリットは固い友情なんだと思う」と付け加える。言葉数の多い歌詞からある程度想像できたことだが、とにかく饒舌な人だ。

そんなグレイシーは元を正せば、聴き手とオンラインでコミュニケートすることで支持層を確立。パンデミックも重なったため、本格的なツアー活動を始めたのは2021年秋になってからのことだ。以来場数を踏み、敬愛するテイラー・スウィフトの『THE ERAS TOUR』の前座を務めて最高のお手本から学び、巨大なスタジアムのステージにも立った。でも今回のツアーでは映像などは使わずごくシンプルな演出を選び、前述したバンドを従えて曲をじっくり聞かせることにフォーカス。と同時に、彼女のフレンドリーで謙虚なパーソナリティが前面に押し出されてもいた。

そう、どこまでもフレンドリーなグレイシーは繰り返し「I love you so much!」と口にし、客席と積極的にコミュニケーションを取る。ステージから微笑みかけ、手を振り、投げキスをし、ギターを弾かない時には身軽にステージの端から端まで動き回って、しゃがみこんではオーディエンスと目線を合わせて歌う姿が印象的だ。それだけでなく、差し出された携帯電話を受け取って一緒に記念写真を撮ったりと、至れり尽くせり。

また、公演日によってはサプライズを用意していた彼女(これもテイラーに学んだ?)は日本でもレア曲「405」(2023年発表のファースト『Good Riddance』のデラックス・ヴァージョンより)をアコギの弾き語りで聞かせて、オーディエンスを湧かせる。なんでも、日本公演にあたってファンからのメッセージをチェックしていたところ、この曲へのリクエストが届いていたのだそう。

そして、フロアの前方でオーディエンスが掲げているサインボードもひとつひとつチェックしていたグレイシー、特に彼女の目に留まったのが、“私、失恋したばかり”と書かれたもの。すかさず、「あなたが元気ならいいんだけど、私の場合、哀しい時は大声で歌うと気分が良くなる」と助言し、「この曲は今のあなたにぴったりかも」と前置きして、キーボードを弾きながら歌い始めたのは、2020年発表のデビューEP『Minor』に収められていた「I Miss You, I'm Sorry」だった。失恋後の混乱した心をなんとか整理しようとしている名曲だ。

もっとも、ハートブレイクと言えば彼女の歌詞の定番テーマ。今夜のセットにもブレイクアップ・ソングが多数含まれ、元恋人の新しいガールフレンドに嫉妬している『Blowing Smoke』然り、テイラーとデュエットした『Us』然り(テイラーのパートはもちろんオーディエンスが担当した)然り、自分にとってマイナスな関係を終わらせた解放感に浸る「Free Now」然り、「Tough Love」然り、「21」然り……。どれも無防備に、丁寧に、躊躇いなく自分の心の内をさらけ出した日記のような内容なのだが、かつてはウィスパーに近い控えめな声で歌っていたグレイシーはここにきて、こうした言葉の魅力を存分に引き出す、驚くほどエモーショナルなヴォーカル・スタイルを身に付けるに至っている。ライヴ経験を積んだことも影響しているのだろう、ディープな低音もファルセットも駆使して、自分の憤りや悲しみや後悔の気持ちを巧みに表し、前述した通り、オーディエンスと体験を分かち合うことで自分をハートブレイクから解放しカタルシスを得ていることが、ステージ上の彼女からは伝わってくる。

そしてアンコールのためにグレイシーがキープしておいたのは、『The Secret of Us』からの2曲。まずはお待ちかねの「That’s So True」だ。当然ながらイントロが聞こえた瞬間に会場は大歓声に包まれたのだが、これに劣らぬリアクションを引き出したのが、フィナーレの『Close To You』だった。彼女にとって初めて全米HOT100に入るシングル・ヒットとなったこの曲(最高59位)は『The Secret of Us』からのセカンド・シングルながら、レコーディングされたのは7年ほど前。当時の路線とは趣を異にしていたために一旦お蔵入りになっていたのだが、SNSで公開した音源がファンの間で人気を博し、遅ればせながら収録に至ったのだとか。そんな「Close To You」でパフォーマンスを締め括ったグレイシーは、新しい恋の予感を歌うこの曲のポジティヴな余韻をあとに残し、「今夜のことを一生忘れない! ありがとうございます!」と、手を振りながら走り去って行ったのだった。
(音楽ライター 新谷洋子)

4月8日(火)Zepp Hanedaで行われた「The Secret of Us Tour」東京公演のセットリストは下記の通り。「THE SETLIST: Gracie Abrams」と題されたプレイリストも公開になっており、こちらも是非チェックしていただきたい。

■セットリスト
Risk
Blowing Smoke
21
I Love You, I'm Sorry
Where Do We Go Now?
Mess It Up
Camden
Normal Thing
I Told You Things
Let It Happen
Tough Love
405
I Miss You, I'm Sorry
us.
Free Now
〈アンコール〉
That's So True
Close to You

■プレイリスト「THE SETLIST: Gracie Abrams」
視聴はこちら

Gracie Abrams

WRITER

MeloFlux編集部

メインライターの酒井裕紀を中心に最新の洋楽、KPOPなど世界の音楽の情報を中心にお届け。主にレーベルやアーティストに関連したプレスリリースやランキング、ミュージック・ビデオ等の映像公開、来日公演情報などを発信しています。